【セミナーレポート】「知名度」より「共感」で人が集まる採用ブランディング実践論

労働人口が減り続けるなか、キャリア採用は限られた人材を奪い合う「椅子取りゲーム」の様相を強めています。媒体やエージェントに費用をかけても採用できない、採用できてもすぐに辞めてしまう――多くの企業が抱えるこの悩みに対して、「知名度」ではなく「共感」で人が集まる仕組みをどう作るのか。
本ウェビナー「“知名度”より“共感”で人が集まる ── いま注目の『採用ブランディング』実践論」は、博士人材をはじめとする大学院生・研究者のキャリア支援を行う株式会社アカリクが主催する、国内最大級のHRオンラインイベント「Acaric Summit Premium 人事・採用EXPO -2026 -Summer」にて実施しました。
採用ブランディングの専門家であるBXパートナーズ(博報堂プロダクツグループ)の竹内 葵氏・山根 康介氏、そして日本で初めて採用ブランディングを理論化・体系化したむすび株式会社の深澤 了氏をお迎えし、進行を務めるグロップの那須とともに、およそ60分にわたって理論と現場のリアルを語り合いました。本レポートでは、その内容をダイジェストでお届けします。
本ウェビナーは現在アーカイブ視聴が可能です(2026年7月31日(金)23:59まで)。
目次
1. なぜ「条件」だけの採用は続かないのか
「うちは知名度がないから、まずは給与や休日をアピールしないと応募が来ない」――そう考える企業は少なくありません。しかし竹内氏は、近年のキャリア人材の意識はすでに変化していると指摘します。
キャリア人材の7割以上が、企業の理念やビジョンへの共感を重視して会社を選んでいる。ある大手人材会社の調査では、転職時に経営理念やパーパスを重視する人は70.2%にのぼる
経営理念に共感できない場合は応募を見送ると回答した人は53.6%と半数を超える
それにもかかわらず、世の中の求人票のほとんどが条件面に偏っており、求職者が求める「共感の情報」が圧倒的に不足している

さらに深刻なのが、高い費用をかけて採用した人材の早期離職です。中途入社者の約9割が入社後によくないギャップを感じており、その最大の要因は給与と並んで「職場の雰囲気・社風の不一致」でした。
条件で引きつけた人材は、より条件の良い会社が現れればすぐに転職してしまう
つまり条件による採用は、コストがかかるだけでなくミスマッチを大量生産する構造になっている

2. 採用ブランディングとは何か
では、この負のループから抜け出すにはどうすればよいのか。その一歩が「採用ブランディング」です。竹内氏は、ブランド論の第一人者ケビン・レーン・ケラーの考え方を採用に置き換えて説明します。
・ブランドを形成するうえで重要なのは「強く・好ましく・ユニークなイメージ」。これを採用のあらゆる工程・場面で一貫して醸成することが、採用ブランディングの本質
・説明会での登壇内容や話し方、会場の雰囲気、記事の写真まで、すべてのタッチポイントに一貫性を持たせることで、企業側の「約束」と応募者の「期待」を一致させられる
・軸を「給与などの条件」に置くと過酷な比較競争(レッドオーシャン)に陥るため、独自の強みと企業理念を軸にした「理念共感型採用」へのシフトが必要

ここで重要なのは母集団の「数」ではありません。極端に言えば、10人採用したいなら、自社に100%共感してくれる10人が集まれば十分だと竹内氏は語ります。理念共感で戦えば「御社じゃなきゃダメだ」という必然性マッチに変わり、知名度に関係なく大手に勝つ「ジャイアントキリング」も可能になります。
この一貫した採用体験を、外部任せにせず自社の社員の手で作り上げるプログラムが、BXパートナーズの提供する「FAN Recruiting(ファンリクルーティング)」です。大きく4つのステップで進みます。
① メンバー選定:現場のエピソードをリアルに語れる活躍人材を巻き込む
② ワークショップ(前半):強みやペルソナといった価値要素を整理する
③ ワークショップ(後半):コンセプトやスローガンなどのアウトプットを議論する
④ 採用戦略の完成:独自の採用戦略へと落とし込む

この取り組みは、条件の掛け捨て型から自社に資産が積み上がる「積み立て型」の採用への転換であり、採用コストの削減と、入社後の定着・活躍の両面に効いてくると竹内氏はまとめました。
3. 【対談】なぜお金をかけても採れないのか

ここからは深澤氏・山根氏を中心とした対談へ。「媒体にお金をかけても人が来ない、すぐ辞める」という現場のあるあるに対し、深澤氏はまず構造的な背景を挙げます。
大手企業が新卒・中途ともに採用数を増やしており、中小企業になるほど応募が回ってこない構造になっている
キャリア採用は新卒に比べて打ち手(イベント・媒体・エージェント)が少なく、知名度のある企業が有利になりやすい
「勝ち目がないのでは」と感じてしまう状況ですが、深澤氏はそれを「呪い」と表現します。給与や休日で戦う従来のやり方から抜け出し、自分たちの強み・らしさ・価値観・文化はどこにあるのかと向き合った会社から良くなっていく、と語りました。
その社内改革を阻むボトルネックとして、深澤氏は3つを挙げます。
① 経営者が採用を「経営課題」にしていない。人事に丸投げでは全社の協力体制は作れない
② 従来のやり方を変える「怖さ」。振り返る時間がなく、新しいやり方で結果が出なかったらという不安がある
③ 強みは「当たり前」の中にあり、自分たちでは気づけない。外から見て初めて価値がわかる
実際の成果として深澤氏が紹介したのが、地方・不人気業種という不利な条件を抱えていた岡山の社会福祉法人の事例です。「福祉という言葉をなくす」というコンセプトを掲げて採用ブランディングを実行した結果、それまでゼロだった中途採用が、半年で15人に変わったといいます。
これを受けて山根氏は、マーケティング視点から「問題の解像度を上げる」ことの重要性を補足しました。
「採用できない」を、インプレッション不足なのか、応募・有効応募が少ないのか、面接への接続なのか、内定承諾なのかと分解し、どのステップで歩留まりが起きているかを見極める
「都市部は強く地方は弱い」は大局的には正しいが、特定エリアで愛される企業は、その地域では最強のポジションを取れる。自社が国内でどのポジションにいるかを見つめ直すことが第一歩
4. 【対談】ブランディングとマーケティングはどう違うのか

対談の後半では、混同されがちな「ブランディング」と「マーケティング」の違いが語られました。進行の那須が「似たようなことに思える」と率直に問いかけると、深澤氏はブランド論の定義に沿って整理します。
マーケティングは、社外に対してどう知ってもらい、購買(応募)行動につなげるかという「外向け」の施策
ブランディングには「インナーブランディング」という組織論・組織の話が含まれる。ここがマーケティングとの大きな違い
山根氏はこれを採用の文脈に置き換え、次のように補足しました。
採用活動全般の根底にあるものと、働く先としてどう思われるかの結果、その両方を司るのが「採用ブランディング」
その間をつなぎ、その時々の求職者の行動に合わせて採用のあり方を最適化し続けるのが採用マーケティングの役割
そして施策を考える出発点として山根氏が挙げたのが、「すでに入社してくれた人が、どうやって自社を知り、どんな心理変容で入社に至ったのか」を可視化することです。マーケティング理論から入ると出てこない発見にこそ、次の一手のヒントがあると語りました。
まとめ|「知名度」ではなく「共感」で選ばれる採用へ
本ウェビナーを通じて繰り返し語られたのは、条件の比較で戦い続ける限りミスマッチと離職の連鎖からは抜け出せない、というシンプルな事実でした。自分たちの強み・理念・文化を言語化し、共感してくれる人に一貫したメッセージを届ける。その積み重ねが、知名度に頼らずとも「御社じゃなきゃダメだ」と選ばれる採用につながっていきます。
まずは「自社の当たり前の中にある強みは何か」を、現場を巻き込んで探すこと。そこから、明日の採用は変えていけるはずです。
イベント名:Acaric Summit Premium 人事・採用EXPO -2026 -Summer
開催日時:2026年6月24日(水)・25日(木)・26日(金)各日11:00〜16:00
アーカイブ視聴:2026年7月31日(金)23:59まで
会場:オンライン
参加費:無料
主催:株式会社アカリク
「Acaric Summit Premium 人事・採用EXPO」とは?
株式会社アカリクが主催する、次世代の採用戦略や人事の課題解決をテーマにした大型オンラインカンファレンスです。労働人口の減少や採用手法の多様化が進むなか、各分野のトップランナーや有識者が登壇し、これからの時代を生き抜くための人事・採用ノウハウを3日間にわたり網羅的に発信しました。
アーカイブ視聴は2026年7月31日(金)23:59までです。
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グロップは、製造業をはじめとする現場産業の採用・BPOに数多く伴走してきました。「自社の強みをどう言語化すればいいかわからない」「採用活動をどこから見直せばいいか相談したい」といったお悩みがございましたら、お気軽にお問い合わせください。
