外国人労働者を受け入れるメリット・デメリットは?雇用状況や制度について解説
「外国人労働者のメリット・デメリットは?」
「外国人労働者を受け入れる際の注意点は?」
日本の労働市場は人材不足により、外国人労働者の受け入れが必要不可欠な状況になっています。海外展開やインバウンド対応の強化・採用コスト軽減などさまざまなメリットがあることも、受け入れが増加している要因でしょう。
しかし、外国人労働者を受け入れるためには、差別・ハラスメントへの配慮、生活・定着支援など、乗り越えるべきハードルも少なくありません。「外国人労働者をどのようにして受け入れたらよいのか分からない」と悩む方も多いですよね。
そこで本記事では、メリット・デメリットから受け入れの流れまで紹介します。外国人労働者を受け入れる際の注意点も解説するので、ぜひ参考にしてください。
目次
外国人労働者の雇用状況

外国人労働者数は約230万人で過去最多を更新
外国人労働者数は2,302,587人で前年比253,912人増加し、届出が義務化された平成19年以降、過去最多を更新し、対前年増加率は12.4%と前年と同率。
外国人を雇用する事業所数は342,087所で前年比23,312所増加、届出義務化以降、過去最多を更新し、対前年増加率は7.3%と前年の6.7%から0.6ポイント上昇。
引用:厚生労働省
厚生労働省の「外国人雇用状況」の届出状況まとめによると、2024年10月末時点で外国人労働者数が230万2,587人となり、過去最高を更新しました。外国人を雇用する事業所数は、34万2,087所で過去最高を更新しています。
このことから、多くの企業が外国人労働者の雇用を積極的に行っており、雇用のハードルが下がってきていることがわかります。特に地方の中小企業は都会の企業に比べ、待遇面が劣り人材が集まりにくいため、外国人労働者によって人手不足を補っています。
【国籍別】外国人労働者の割合
| 国籍 | 外国人労働者数 | 割合 |
|---|---|---|
| ベトナム | 570,708人 | 24.8% |
| 中国 (香港・マカオ含む) |
408,805人 | 17.8% |
| フィリピン | 245,565人 | 10.7% |
| ネパール | 187,657人 | 8.1% |
| インドネシア | 169,539人 | 7.4% |
| ブラジル | 136,173人 | 5.9% |
| ミャンマー | 114,618人 | 5.0% |
| 韓国 | 75,003人 | 3.3% |
| タイ | 39,806人 | 1.7% |
| スリランカ | 39,136人 | 1.7% |
| ペルー | 31,574人 | 1.4% |
| G7 等 | 84,173人 | 3.7% |
| その他 | 199,830人 | 8.7% |
出典:厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和6年10月末時点)
国籍別に外国人労働者数をみると、ベトナムが最多の57万708人で全体の24.8%を占めました。次いで、中国が40万8,805人(全体の17.8%)、フィリピンが24万5,565人(全体の10.7%)となっています。
【産業別】外国人労働者の割合
| 産業 | 外国人労働者数 | 割合 |
|---|---|---|
| 製造業 | 598,314人 | 26.0% |
| サービス業 (他に分類されないもの) |
354,418人 | 15.4% |
| 卸売業・小売業 | 298,348人 | 13.0% |
| 宿泊業 飲食サービス業 |
273,333人 | 11.9% |
| 建設業 | 177,902人 | 7.7% |
| 医療・福祉 | 116,350人 | 5.1% |
| 情報通信業 | 90,546人 | 3.9% |
| 教育・学習支援業 | 82,902人 | 3.6% |
| その他 | 310,474人 | 13.5% |
出典:厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和6年10月末時点)
産業別に外国人労働者数をみると、最も多い就労先は「製造業」の59万8,314人で、全体の26.0%を占めています。次いで、「サービス業」が35万4,418人(15.4%)、「卸売業、小売業」が29万8,348人(13.0%)となっています。
外国人労働者を受け入れる5つのメリット

- 慢性的な人手不足の解消
- 海外展開・インバウンド対応の強化
- 多様な価値観による組織活性化
- 社会的評価・企業イメージの向上
- 採用コスト軽減の可能性がある
慢性的な人手不足の解消
外国人労働者の受け入れは、求職者の母数が広がるため慢性的な人手不足の解消となります。特に、特定技能の在留資格を持っている場合、即戦力人材を確保できるという大きな利点があります。
| 【特定技能とは】 特定技能とは、2019年4月に新設された在留資格のひとつで、人手不足が深刻な産業分野で外国人が働けるように設けられた新しい在留資格です。国内で人材を確保することが困難な産業分野において、一定の専門性や技能を有する外国人を受け入れることを目的とする制度となっています。 |
海外展開・インバウンド対応の強化
多くの外国人労働者は、母国語だけでなく日本語や英語を含む複数の言語を話せるため、海外展開・インバウンド対応への強化に繋がります。近年、訪日外国人観光客の増加により、多様な言語に対応できる外国人労働者は貴重な存在となっています。
また、彼らの文化的理解や言語能力を活かした他国のリサーチも可能となり、より精度の高い市場戦略を構築できます。彼らの視点や知識は、他国との競争力強化に貢献するでしょう。
多様な価値観による組織活性化
外国人労働者は、日本とは異なる文化的背景や価値観を持つ人材です。多様なアイデアや視点が組織に生まれやすく、職場の活性化につながります。
また、自ら海外で働く決意をしている人材はチャレンジ精神が強く、仕事への主体性や向上心が高い傾向があります。業務改善の提案や新しい気づきが生まれる場面も多く、既存の従業員に良い刺激を与え、組織全体の成長を促します。
社会的評価・企業イメージの向上
自社の多様性の高まりは、社会的評価・企業イメージの向上にも有効です。外国人材を受け入れている企業は「国際的な働き方に理解がある」「柔軟性の高い経営をしている」と見なされやすく、顧客やビジネスパートナーからの信頼に繋がります。
さらに、求職者にとっても「オープンで働きやすい会社」という印象を持ってもらいやすく、採用ブランドの向上にも寄与します。
採用コスト軽減の可能性がある
外国人労働者を採用することで、求職者数の幅が広がり採用期間の短縮化で、採用コストを軽減する可能性があります。人材不足で思うように求職者が集まらず採用期間が長期化している地方・中小企業におすすめです。
また、助成金を活用することで、外国人労働者の採用活動や受け入れ環境の整備にかかる費用を軽減できることも魅力です。
外国人労働者の受け入れはデメリットもある

- 文化の違いによるトラブルの可能性
- コミュニケーションに工夫が必要
- 就労開始まで時間がかかる
- 在留資格・法的手続きが複雑
文化の違いによるトラブルの可能性
外国人労働者を受け入れるデメリットとして、職場でのトラブルが発生する可能性があります。文化や習慣の違いによるコミュニケーション不足や価値観の不一致が起きやすいからです。
例えば、日本では「時間厳守」「長時間働くこと」を重視する傾向がありますが、他国では「家族やプライベートを優先する」価値観が根付いていることがあります。こうした文化の相違を前提に、お互いを理解し合う気持ちが必要です。
コミュニケーションに工夫が必要
外国人労働者との、意思疎通がスムーズにできずコミュニケーションに問題が生じることもあります。日本人は大まかな指示でも意図を汲み取ろうとして行動する傾向にありますが、具体的な指示を必要とする多くの外国人にとっては理解しにくいかもしれません。
外国人労働者とコミュニケーションを取る際は、明確かつ具体的に伝えるなど工夫が必要です。
就労開始まで時間がかかる
外国人労働者の就労開始までに時間がかかることも、デメリットとしてあげられます。ビザの発行や渡航までに時間を要する場合や、日本在住の外国人労働者であっても在留資格の変更手続きにより、就労開始までに1〜3ヶ月以上を要します。
在留資格・法的手続きが複雑
外国人労働者に関する手続きには、在留資格の確認・許可された業務内容の遵守・在留期間の更新など、日本人雇用にはない複雑な業務が含まれます。さらに、書類不備などがあると審査が遅れることもあります。
外国人労働者の採用計画を立てる際は、手続きにかかる時間を考慮し、内定から就労開始日までに十分な余裕を設ける必要があります。
外国人労働者を受け入れる際の注意点

- 日本人と同等の労働条件を確保
- 差別・ハラスメントへの配慮
- 生活・定着支援を徹底
日本人と同等の労働条件を確保
日本の労働基準法は外国人にも適用されます。そのため、労働条件は日本人と同等に設定しなければなりません。賃金を不当に低くすることや、国籍や人種を理由に待遇を変えることは法律で禁止されています。
福利厚生についても同じく、日本人と同等の内容を提供する必要があります。法令を遵守し、適切な雇用を心がけましょう。
差別・ハラスメントへの配慮
外国人労働者を受け入れる場合、国籍・民族・宗教などを理由に人種差別が起きる可能性があります。国籍を理由とした差別的扱いは、労働基準法で禁止されているため、差別・ハラスメントを防ぐことができる職場環境の整備が重要です。
例えば、社員向けの研修で文化的背景の違いを理解してもらうことや、相談窓口を設置してトラブルを早期に把握できる仕組みをつくることが有効です。また、言語面でのサポートや、社内ルールを多言語で共有する取り組みも、誤解を防ぎ公平な働き方を促します。
生活・定着支援を徹底
外国人労働者(特定技能)の受け入れ企業は、日本で円滑に働き・生活できるよう支援を行う義務があります。例えば、来日後の住居探し・賃貸契約・銀行口座の開設・携帯電話の契約などの支援が必要です。
生活・定着支援は、外国人労働者の長期雇用と企業の成長に不可欠な要素となっています。入国後の支援は、怠らないようにしましょう。
生活・定着支援は登録支援機関に委託できる
特定技能の生活・定着支援は、通常の人事業務とは性質が異なり、企業だけで完結するのが難しい場面が多くあります。そのため、多くの企業では支援を登録支援機関へ委託しています。
専門機関に任せることで法令遵守の迅速な対応が可能になり、企業は本来の業務に集中できます。特定技能の採用や支援のことならグロップにご相談ください。安定した就労と定着をサポート可能です。
外国人労働者を受け入れる流れ

- 任せたい業務を選定
- 求人の募集・選考
- 雇用契約の締結
- 就労ビザの申請
- 入国・就労開始
1.任せたい業務を選定
外国人労働者へ任せたい業務を明確にしましょう。具体的な業務内容・求めるスキル・経験を把握しなければ、募集方法や採用ラインの線引きが難しくなります。
2.求人の募集・選考
任せたい業務が決まったら、求人広告を出します。求人広告は、ハローワークや外国人労働者紹介サイトなどを活用して、応募者を募りましょう。
選考時に、在留カードの提示を依頼し、在留資格の種類・期限などを必ず確認します。就労が認められていないや在留期限の切れた外国人を採用すると、出入国管理法により企業が罰せられる可能性があるので注意が必要です。
3.雇用契約の締結
賃金や労働条件を記載した雇用契約書を作成し締結しましょう。日本の労働基準法や外国人雇用管理規程などの法律を遵守した雇用契約書の作成が必要です。
また、外国人労働者との雇用契約書は、母国語や英語で交付することが望ましいです。言語の壁を考慮して、労働者が内容を正確に理解できるようにします。
4.就労ビザの申請
就労ビザを取得するために「在留資格認定証明書」を入国管理局で発行します。発行後は、3ヶ月以内に日本に入国しなければなりません。
証明書が発行できたら、日本大使館に就労ビザを申請しましょう。企業側は、外国人労働者の氏名・在留資格・期限などをハローワークへの申請が必要になります。
5.就労開始
企業は、就労可能な状態にできるように、生活環境を整える支援を行わなければなりません。準備が整ったら就労開始です。就労開始後も、外国人労働者が働きやすいサポートを続けましょう。
外国人労働者に関するよくある質問
外国人労働者を採用するにはどんな在留資格が必要?
外国人労働者を採用する際に必要となる在留資格は「技術・人文知識・国際業務」「特定技能」「技能実習」です。在留資格ごとに行える業務が異なるので、自社で就労可能な在留資格を持っているかを、在留カードなどで確認しましょう。
特定技能と技能実習の違いは?
大きな違いは制度の目的です。特定技能は人手不足を補うための労働力の確保が目的ですが、技能実習は日本の技術を発展途上国に普及させることを目的とした制度です。
外国人雇用における法的リスクはある?
外国人雇用には「不法就労助長罪」や「労働基準法違反」などの法的リスクがあります。在留資格の管理不足や就労範囲の誤認・長時間労働などが原因で、罰則や企業イメージの低下につながる可能性があります。
外国人雇用に助成金はある?
外国人雇用には、人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備コース)という助成金制度があります。この制度は、外国人労働者が安心して働ける職場環境を整備し、定着率向上に取り組む事業主を支援する制度です。
言語や文化の違いによるトラブルを防ぐには?
明確な契約内容の説明・多言語での情報提供・日本でのビジネスマナー・文化に関する教育・日本人従業員の異文化理解促進が重要です。また、相談窓口の設置やわかりやすい日本語での指示、コミュニケーション方法の工夫も効果的でしょう。
まとめ:外国人労働者の受け入れはメリットが多い
外国人労働者の受け入れは、企業の活性化に大きく貢献します。少子高齢化が進む日本では、多様な人材を確保できる貴重な手段です。理解を深め職場環境を整えることで、定着率向上にもつながるでしょう。
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