
サードパーティCookieの廃止対策に頭を悩ませていませんか?
「計測データが合わない」「リターゲティング広告の効果が下がった」といった悩みは、多くのマーケティング担当者が直面している課題です。特に2025年に入り、この状況はさらに複雑になっています。
GoogleはChromeでのサードパーティCookie廃止を撤回したものの、プライバシー保護を強化する方針は維持されています。つまり、保持できるデータは今後減少していく方向に変わりはなく、サードパーティCookieの効果は右肩下がりになっていくことが予想されます。
この記事では、サードパーティCookieの最新動向から具体的な対策、そして今後のマーケティング戦略までを分かりやすく解説します。この変化をチャンスに変えるためのヒントが必ず見つかるはずです。
1. サードパーティCookieとは?なぜ廃止の流れになったのか

Cookie基本の仕組みと2種類の違い
Cookieとは、ユーザーがWebサイトに訪問したときに、ChromeやSafariなどのブラウザに行動ログや入力情報を保管できる仕組みのことです。
これによって、ログイン状態の維持やショッピングカートの中身の記憶など、便利な機能が実現しています。
Cookieには大きく分けて2種類あります:
ファーストパーティCookie:
あなたが訪問しているサイト自身が発行するCookieで、ログイン情報や言語設定などの保存に使用されます。現時点では主な規制対象外です。
サードパーティCookie:
訪問しているWebサイトとは異なるドメイン(ホスト)から発行されるCookieのことです。
例えば、とあるWebサイトに訪れた時に、訪問したドメインからCookie(ファーストパーティCookie)が発行されるだけでなく、サイト内に広告タグが設置されている場合には、広告配信サーバーからもCookie(サードパーティCookie)が発行されます。
プライバシー保護の世界的潮流
サードパーティCookieを活用したパーソナライズド広告を受け取ったユーザーからすると、「知らない間に第三者に個人情報が活用されている」「プライバシーの侵害ではないか」「監視されている気がして嫌だ」と感じる原因となります。
このような懸念から、EU・GDPRや米国のCCPA、日本の改正個人情報保護法など、世界中で法規制が進んでいます。同時に、ブラウザベンダーによる規制も強化されてきました。
各ブラウザの対応状況と最新動向
主要ブラウザのサードパーティCookie規制状況は、ブラウザによって大きく異なります。
・Safari (Apple):日本国内で約25%のシェアを持つSafariは、すでに全面ブロックを実施しており、プライバシー保護に最も積極的なブラウザとなっています。
・Chrome (Google):最大のシェア(約55%)を持つChromeは、2025年初頭からの段階的廃止方針を撤回しました。しかし、プライバシー保護機能の強化は継続して進めています。
・Firefox (Mozilla):約5%のシェアを持つFirefoxは、トラッカーを規制し、プライバシー保護を強化する方針を取っています。サードパーティCookieを完全にブロックするわけではありませんが、トラッキング目的の利用は制限しています。
・Edge (Microsoft):約12%のシェアを持つEdgeは、段階的に制限を強化中です。完全なブロックではなく、ユーザーが選択できる設定オプションを提供しています。
Googleの最新方針変更(2025年)
Googleは2020年1月にサードパーティCookieの廃止を発表していましたが、実施は延期され続け、2024年4月にようやく2025年初めから全ユーザーのサードパーティCookieを段階的に廃止する方針を示しました。
しかし、大きな転換点として、2024年7月22日にGoogleはサードパーティCookieの廃止を撤回することを表明しました。 この背景には以下の要因があります:
1. サードパーティCookieに代わる技術(プライバシー・サンドボックス)の開発が想定よりも実装が難航する問題が発生
2. 広告業界からの強い反発(廃止によってユーザーの行動に適した広告の配信が困難になることや、効果測定がうまく実施できないことへの懸念)
しかし重要な点として、Googleはサードパーティクッキーの廃止撤回を表明すると同時に、ユーザーのプライバシー保護を強化するための機能を追加していくことも発表しました。
2. デジタルマーケティングへの具体的な影響

サードパーティCookieの規制強化は、デジタルマーケティングのさまざまな領域に影響を及ぼしています。特に以下の4つの領域で影響が顕著です。
リターゲティング広告の精度低下
サードパーティCookieが廃止されることで「どの広告をクリックした人がコンバージョンしたか」という計測もできなくなり、さらに行動をターゲティングした広告も基本的には不可能になります。
ECサイトでは、カゴ落ち顧客へのリマインド広告の効果が減少する傾向がみられます。
ドメイン横断トラッキングの制限
複数のサイトでのユーザー行動を追跡できる機能が制限され、顧客ジャーニーの把握が難しくなっています。
これにより、タッチポイント分析の精度が低下し、マーケティング施策の効果測定が困難になっています。
行動ターゲティング広告の変化
ユーザーの閲覧履歴に基づいて関連広告を表示する手法も影響を受けています。サードパーティCookieはHTTPのヘッダーまたはJavaScriptを使って設定します。こうした情報を総合することにより、サードパーティーは利用者の行動を把握できるわけです。
この機能が制限されることで興味・関心ベースのターゲティング精度が低下し、広告費用対効果の悪化が見られるケースがあります。
アフィリエイト広告の計測課題
どのアフィリエイトリンク経由でコンバージョンしたかの判別が難しくなり、成果測定と報酬支払いの正確性に問題が生じています。
データ計測値の乖離
このような事例からも、Cookieなどの規制により従来の方法では正しい計測が難しくなっている可能性が考えられます。 各媒体の管理画面とアナリティクスツールでの計測値に乖離が生じ、意思決定が難しくなっているケースが増えています。
多くの企業では、広告管理画面上の数値と実際のコンバージョン数に差が見られ、正確な広告効果測定が困難になっています。
3. Cookie廃止後の代替手段と対策

サードパーティCookieの規制強化に対応するため、以下の代替手段が注目されています。
4つの代替ソリューション比較
1. 確定IDソリューション
ユーザーの同意を得た上で個人を特定できる情報(メールアドレスなど)を暗号化・ID化して利用するアプローチです。プライバシーに配慮しつつ、正確なターゲティングが可能になります。
2. 推定IDソリューション
仮想IDをWeb横断で作成し、AIなどでユーザー情報を補完します。複数のWebサイトやアプリ間で共通のIDを使用してユーザーを識別する方法で、完全な個人識別は行わず確率的にマッチングします。
3. 文脈(コンテクスチュアル)ターゲティング
ユーザーの行動履歴に依存せず、コンテンツ内容(テキスト、画像など)をAIで解析し、その文脈に適した広告を表示する手法です。閲覧しているコンテンツの内容から興味関心を推定します。
4. ブラウザ完結型ソリューション
ユーザーデータをブラウザ内で処理し、外部に送信せずプライバシーを保護しながら広告のパーソナライズを実現する方法です。GoogleのChrome Topics APIなどが該当します。
企業規模・予算別の現実的アプローチ
大企業向け:独自のデータプラットフォーム構築とCDPの導入、複数の代替ソリューションを併用した包括的アプローチ
中堅企業向け:Googleやメタの提供するコンバージョンAPIの活用と、ファーストパーティデータの収集強化
小規模企業向け:コンテクスチュアルターゲティングの活用と、メールマーケティングなどの直接的なチャネルの強化
すぐに始められる3つの対策
1. ファーストパーティデータを活用する
自社で直接収集した顧客データ(会員情報、購入履歴、サイト閲覧履歴など)を活用し、顧客理解を深めてマーケティングに活かす戦略です。個人情報保護に配慮しながら、同意に基づいた活用が基本となります。
2. 効果計測にはファーストパーティCookieを利用する
自社サイトのドメインが発行するファーストパーティCookieベースの計測環境を整備しましょう。これにより規制の影響を受けにくい安定した効果測定が可能になります。
3. 広告配信にはコンバージョンAPIを活用する
広告効果測定はコンバージョンAPIを用いることで可能です。ファーストパーティクッキーのデータを広告媒体に戻し、広告サーバーに直接送信することで広告効果測定を行います。
Web上で取得したデータを別のブラウザに送信する方法ではないため、クッキー(Cookie)の規制を受けずに済みます。
4. ファーストパーティデータ活用の成功事例

効果的なデータ統合の事例
国内の自動車関連企業では、社内外に分散していた顧客データ(Web行動、試乗・購買データ)を統合IDで一元化しました。
このデータを分析し、購入確率の高い行動パターンを特定。広告プラットフォームと連携して配信を最適化したことで、コンバージョン効率が向上しています。
Googleの事例によると、SUBARUはデータ統合とGoogle広告との連携によりマーケティング成果の改善に成功しています。
リアルタイムパーソナライゼーションの活用
海外の飲料メーカーでは、ユーザーから同意を得て収集したデータ(年齢・位置情報)と気象データを組み合わせたリアルタイムマーケティングを実施。
特定の条件を満たすユーザーに限定して特典メッセージを自動送信することで、従来のマス向けキャンペーンよりも高い反応率を実現しています。
アサヒビールなどの飲料メーカーもファーストパーティデータを活用した施策を強化しています。
中小企業でも実践可能なアプローチ
小規模ECサイトでも、複雑なシステムなしでファーストパーティデータの活用が可能です。
会員登録フォームでの適切な同意取得と、購入履歴に基づいたメールマーケティングの強化により、リピート率の向上が期待できます。
具体的には以下のステップで実施します:
1. 会員登録時の明確な同意取得プロセスの整備
2. 購入履歴や閲覧履歴に基づくセグメント作成
3. シンプルなRFM分析による優良顧客の特定
4. パーソナライズされたメールマーケティングの実施
5. これからのマーケティング戦略:専門家の予測

ファーストパーティデータを中心とした戦略構築の具体的ステップ
1. データ収集の強化
・会員制度の魅力向上(特典の充実、ポイント制度の導入)
・同意取得の最適化(透明性のある説明、段階的な同意取得)
・顧客体験と交換で価値を提供(パーソナライズドな体験、有益なコンテンツ)
2. データ活用の高度化
・CDPやMAツールの導入によるデータ統合
・セグメント分析の精緻化(行動パターン、購買確率など)
・予測モデルの構築(LTV予測、解約予測など)
3. 計測基盤の再構築
・コンバージョンAPIの導入
・サーバーサイド計測への移行
・統合測定フレームワークの構築
クッキーレス時代の4つの成功の鍵
1. コンテンツマーケティング強化
ターゲティング精度の低下を補うため、価値の高いコンテンツ提供で自発的な集客を強化します。SEO対策や専門性の高い記事制作による有機流入の拡大が重要です。
2. 顧客体験の最適化
サイト内での体験を向上させ、コンバージョン率を高めます。ファーストパーティデータを活用したパーソナライズドな顧客体験の提供が鍵となります。
3. オムニチャネル戦略の推進
オンライン・オフライン双方のタッチポイントを統合し、一貫性のあるカスタマージャーニーを構築します。特に実店舗とオンラインの顧客データ連携が重要です。
4. 組織・体制の整備
データプライバシーのコンプライアンス体制強化と、マーケティング部門とIT部門の連携強化が必要です。プライバシーバイデザインの考え方を組織に浸透させましょう。
今後のテクノロジートレンド予測
1. AI活用の加速:マーケティングのあらゆる場面でのAI活用が加速し、特に予測モデルの精度向上が期待されます。
2. ゼロパーティデータの台頭:顧客が意図的に共有する情報(ゼロパーティデータ)の重要性が高まります。
3. データクリーンルームの普及:複数企業がプライバシーを保護しながらデータを共有・分析できる「データクリーンルーム」の利用が拡大します。
4. Web3.0とブロックチェーン技術の活用:ユーザー主導のデータ管理を可能にする技術として注目されています。
6. まとめ:今すぐ取り組むべき実践的アクションステップ

サードパーティCookieへの依存を減らすために、今すぐ取り組むべきアクションステップをまとめました。
現状の計測環境の見直し方法
1. 自社Webサイトの計測タグの洗い出し(サードパーティCookieに依存しているものを特定)
2. 各広告媒体の管理画面と自社アナリティクスツールの計測値の乖離を確認
3. 計測の信頼性を評価し、改善が必要な領域を特定
データ収集・活用基盤の構築手順
1. ユーザー同意取得の仕組みを整備(Cookie同意バナーの設置など)
2. ファーストパーティデータの収集ポイントを増やす(会員登録、アンケート、購入履歴など)
3. データの一元管理の仕組みを構築(CDPやMAツールの導入検討)
代替技術導入のチェックリスト
・コンバージョンAPI(Meta CAPI、Google拡張コンバージョン)の導入
・サーバーサイド計測の検討
・コンテクスチュアルターゲティングの試験運用
・ファーストパーティCookieを活用した計測への移行
今後の業界動向の注目ポイント
・Google Privacy Sandboxの動向
・各ブラウザのプライバシー保護機能の強化状況
・広告テクノロジー業界の新たなソリューション開発状況
・プライバシー関連の法規制の動向
Googleのサードパーティクッキーの廃止は撤回されたものの、代替技術となるプライバシー・サンドボックスの開発は継続しています。
今後、プライバシー・サンドボックスに指摘される問題が解決して実装されれば、サードパーティクッキー廃止の議論も再燃することが予想されるでしょう。
変化を恐れずに積極的に対応することで、プライバシー保護とマーケティング効果を両立する未来が開けてきます。この変革期をチャンスと捉え、新しいマーケティングの形を模索していきましょう。
7. 参考資料・リソース
・最新情報をチェックすべき公式サイト:Google Privacy Sandbox、Apple Privacy
・役立つツール・サービス:Google Analytics 4、Meta Business Suite、各種CDPツール
・関連法規制:GDPR、CCPA、改正個人情報保護法
デジタルマーケティングの世界は常に変化しています。
サードパーティCookieの廃止は一つの転換点に過ぎず、むしろこれを機に、より価値のあるマーケティング戦略を構築するチャンスだと捉えましょう。